ニュースレター8月号に書いた文章です。
拘縮について(その2 寝たきりの場合・腰下肢編)
今回は寝たきりの肩の拘縮パターンについて。
身体は何か危機的な状況があってハッと身構えた時の姿勢、背中を丸めて腕や脚を屈曲させた姿勢に基本的にはなろうなろうとします。
麻痺になったり病気や老化で筋力が衰えたりすると、太い筋肉のほうが勝ってしまうので曲げる筋・伸ばす筋の均衡が崩れて元に戻せなくなってしまいます。
そして一度バランスが崩れると、徐々に徐々にと引っ張られていってしまい、拘縮は進行していきます。
立つことがなくなると、下肢の後面がすぐに硬くなってきます。
太ももの裏の筋肉が固まると膝が伸びなくなり、ふくらはぎが縮こまると足首が背屈できずに尖足になってしまいます。
膝や足首に拘縮ができてしまうと、たとえ下肢筋力が元に戻ったとしても歩行するのはかなり困難になってきます。
まあもちろん程度問題で全く不可能なわけではないですが、「元のように戻る」のは難しい。
膝が伸び切らないと、上向きに寝ている状態では脚を伸ばしていることが負担になってきます。
ちょっとでも膝が曲がっていると、踵に負荷がかかりすぎる不自然な姿勢になるからです。
一度膝の拘縮が始まってしまったら、いっそもっと膝を曲げて足の裏がちゃんと床に着くようにした方が本人は楽なのです。
大腿と下腿と床で正三角形に近い形になって構造的にも安定するので、自然とこの姿勢になってしまいがちです。
そしてそのまま動かないから、ますます拘縮は進行します。
この時、股関節もずっと屈曲した(縮こまった)状態になっているわけで、これも次第に固まって伸びなくなってしまいます。
内またに力が入って股関節が開かなくなる場合も多いです。
緊急事態に自然にとる体勢=弱いところを庇う姿勢と同じと思えばさもありなんです。
これで安定すればまだいいのですが、両下肢の拘縮の度合いにはわずかでも左右差がある以上、必ずどちらかに引っ張られていって捻じれます。
寝たきりなら体幹をねじる動作などほとんどせず、背腰部はすでにカチンコチンに硬いことが想像されますが、そこからさらに腰がひねられたら、痛みも出てくるのではないでしょうか?
痛いと正三角形の構造で安定していた下肢をさらに曲げて、ぐっと膝を胸に近づけようとしたりします。これでさらに不安定になってしまうので、またバランスを取ろうとします。
体幹・腰を下肢のねじれとは反対方向に捻ったりとか、パターンはいろいろ個人差ありますが。
こうなってくると足首も強く底屈して尖足になっている可能性が高いです。
特に足首は拘縮になりやすい場所です。足の甲を上に反らせる脛の筋肉より、底屈させ地面を蹴って前へ進むふくらはぎの筋肉のほうが圧倒的に強いからです。
立って足に体重の乗せることをやめると、すぐに筋肉の均衡バランスが崩れてきてしまいます。
特に足首は完全に固まって戻せない状態になってしまうのが速く、改善は困難なことが多いです。
できれば足首が固まりきる前にリハビリ・マッサージを始めることをお勧めします!
関節が固まって運動が制限されているから不自由だ、という以前に、動かなければ筋肉も緊張するし流れも滞るし痛みが発生しやすい。
元気な人でも風邪で2~3日じっと寝込んで動かないというだけで、あんなに身体が苦しくなるのですから。
ただただ動かないでいるということだけのことが、実は相当しんどい状態だと思われます。身体は歩くこと前提でできているので、立てなくなると色々と不都合が生じてくるのです。
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