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tanaka

マッサージの実際の種明かし(1)

ニュースレター11月号に書いた文章です。


今までは疾患ごとにリハビリ的な施術方法をどうするか、みたいな話が多かったですが、今回はマッサージそのものをどんなふうにやっているのかというお話です。



マッサージの実際の種明かし(1)


学校に入って最初に習うのは、うつ伏せになってもらって背中を押すところからです。

しかし歩行困難な方へ伺う訪問マッサージの場合は麻痺やら円背やらあって、うつ伏せになれる患者さんはほとんどいないのが現状です。

たとえうつ伏せになれたとしても、そこからさらに腰を押したりするのは過刺激だろうと思われる方たちばかりです。


うつ伏せのまま10分間保持してもらうとかは、かなり有効だとは思うのですが。

ですからこの仕事初めてすぐ、あお向けで寝たきりの患者さんをさあマッサージしてみてと言われてもどうしたらいいか分らなかったのを覚えています。

あお向けでやるのは顔面マッサージかお腹のマッサージぐらいしか知らなかったので。


一応指圧やあんまの基本の型とかはあるけれども、そこからいろいろ試行錯誤していくので施術者によってマッサージのやり方は千差万別。

リハビリのやり方よりもバラバラかもしれない。

整骨院などはスタッフ間である程度は手技の統一をするのだろうけど、外回りのこの業界はかなり野放しなことが多いかと思われます。


なので、以下はあくまで僕のやり方の話となりますが。

まずは、できるだけまっすぐにあお向けに横になってもらいます。

本人がまっすぐだと思っていても頸が傾いていたり、骨盤が歪んでいたりすることがほとんどです。

これらをあくまで無理のない範囲で修正します。その状態でできるだけ「正しい方向で」肩、肘、股、膝、足首の関節を動かし、正常な可動域まで動くかどうかを確認します。

歩行困難な高齢者はまず最後まで動かないです。


で、可動域の最後まで動くことを邪魔している筋肉の短縮こわばりはどれかを探り、それをほぐそうとマッサージなりストレッチなりをすることになります。

少しずつ筋肉を緩めながら、左右均等の正しい姿勢に誘導していくことを目標とします。

歪みがとれ、関節が正しい方向に動くようになることで、関節の動作時痛が軽減することも多いです。

ポイントは例えば股関節の屈曲拘縮なら腹筋から太もも前面のこわばり、膝の拘縮なら太もも後面のこわばりを狙って緩めることです。

ついでに股関節まわりからおしりの筋緊張を見ながら股関節のこわばりを軽減させて、前から見ても横から見ても(三次元的に)股関節が歪みなく正しく屈伸できるように誘導していきます。


足首の拘縮には、ふくらはぎからアキレス腱の筋緊張を緩めます。

足首が硬くなると重心が前に(つま先に)乗りづらく、後向けに転倒しやすくなりがちです。


また下肢の浮腫に対しては、足の趾一本いっぽんから曲げ伸ばしの両方向ともに動ける最大の範囲でゆっくりと動かすことを繰り返します。

ついで足首、膝、股関節とすべての関節をできるだけ大きく動かすことを繰り返します。

教科書的には心臓方向へ皮膚を軽擦するのが推奨みたいです。

ただし浮腫で皮膚が引っ張られて弱くなっているのを、あまり強く揉まないほうがいいようです。


下肢をマッサージすることで腰部がゆるみやすくなるし、その逆もまた然り。腰部の緊張を緩めると、下肢が伸びやすくなります。

また腰痛が強く、腰そのものへのマッサージでは余計に悪化させてしまうような場合も、臀部から下肢にかけてのマッサージで腰痛の軽減を図ろうとするのがセオリーとなっております。

こわばっているものを緩めるだけで、動きやすくはなるし、判りやすい効果が出やすいのです。

ただしそのままにしていると、

「やってもらった後は楽になるけど、また元に戻ってしまうよ」

ということになります。

そりゃそうだ。

動きやすくなったり痛みが軽減したところで、ご自身で運動なりをされるなら相乗効果が期待できるのですが・・・。


3歩すすんで2歩下がる。魔法のような奇跡を期待されても困りますが、たとえ他動的にでも運動することには大いに意味があると思うのです。

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