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tanaka

ナゾの股関節痛

ニュースレター4月号に書いた文章です。

ある患者さんから、ちょっと家族さんの身体の状態を見て欲しいのだけれど、と声をかけられました。どうやら急に股関節が痛くなり歩くのも困難になったのだが、かかりつけの内科で痛み止めを処方してもらうもほとんど効かず、整形外科に行くことをすすめられたとのことです。

右の股関節を曲げても伸ばしても痛く、日常生活が困難になっていました。腫脹や熱感ははっきり左右差が判らないレベル。一週間以上経つが痛みはさらにひどくなってきているとのことで、鼡径部やや下あたりの大腿直筋に強い圧痛を訴えます。

いわゆる股関節痛に対する典型的な治療ポイントをいろいろ触ってみたのですが、1ミリも改善しないどころか余計に痛くなりそうな始末。痛みは残るけれども可動域運動は若干改善しましたという展開すらない。

「急性の炎症ならなにをやってもやらなくても、2週間ぐらいでややマシぐらいにはなるパターンが多いですが、痛みがだんだん悪化しているというのはちょっと気になります。股関節のまわりの筋肉のトラブルを疑っていくつか触りましたけれどまったく変化がないので、寝違えレベルの筋肉トラブルではなく関節そのものに問題がある可能性もあるかもしれません。やはり一度、病院には行かれてヤバイ症状でないことを確定してもらったほうが良いのではないでしょうか?歩けているから骨折はないとは言っても、それすら結局レントゲンを撮らないと判らないですし。軟骨がすり減っているかどうかも、マッサージだけでは判りようがないですから。昔訪問してた100歳近いおばあちゃんに生理のような出血があって、あら不思議と思っていたらだいぶ前にやった股関節骨折の出血が膣のほうに流れたためだったという話を思いだします。骨盤の中のことはなかなか難しい場合もありますし・・、というか医師がマッサージ師かで迷うなら迷わずお医者さんに行って下さいよって話ですね!整骨院かで迷うならば相談に乗るのはやぶさかではないですけれども!


結局その日にレントゲンを撮りに行かれるも、骨のスキマは十分開いており骨と骨がこすれるような異常はないですよ、とのことでした。

「そうですか。痛みの原因が、筋肉のアンバランスのせいだとはっきりしたなら、痛くてもだましだまし動かしていくしかないんじゃないでしょうか?


という結論に達しました。一度だけお身体に触ってみましたが、痛みのせいでこわばっている背腰部をゆるめると精神的にはそれなりに楽にはなるものの、股関節そのものは痛みが強くてほとんど動かせないままでした。

その後一か月たっても痛みが引かないので、大きな病院に検査に行かれたと聞きました。そして関節に水が溜まっており、血液検査で炎症反応もあるので痛み止めと抗生物質が処方されました。そしてその直後から痛みはかなり改善したとのことでした。

「ということは関節になんらかの細菌が入って炎症を起こしていたんですかね?それなら発熱ぐらいしそうなものですが、それはずっと解熱鎮痛剤を飲み続けていたので熱も出なかったということなのかな?


などと勝手に納得していたのですが、実は正解はそれですらなかった。そもそも抗生物質が即日で効いて痛みが消えるとは考えづらく、新しい痛み止めの薬が効いたのであろうとのことでした。最初の痛み止めがあまり効かなかったのは、その患者さんにとっては効きづらい種類の薬だったから。だから薬の種類を変えると、とたんに効果が出たのだろう、と。結局、病名は「変形性股関節症による股関節炎」となったそうです。

なんだ!やっぱり薬で痛みを緩和して関節を緩めて正しい位置にして、運動していくといういつもの正攻法しかなかったんだ。でもあんまり痛いときに無理な運動は駄目だし、痛みが強いときには実際にどの程度にしておくべきかというのが、最大の難問です。

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